商材の価値を再認識させたい

“不便・困難化”の法則

2016年2月9日

 

物事の持っている価値を、あらためて再認識させる。

そのハードルは、決して低くありません。

 

しかしご自身の経験でもあると思いますが、極端な例を出せば、たとえばスマホを家に忘れてしまったとき。

色んな人と連絡がとれない、暇なときにゲームやyoutubeができない…なんて生活に直面すると、あらためて、スマホの重要性を再認識すると思います。

(あまりにも生活必需品のため、取りに家に帰ってしまうこともあるかもしれませんが…)

 

今回は、そんな「不便・困難な状況に陥ることで、あらためて物事の大切さを再認識する」という“不便・困難化”の法則を取り上げます。

 

 

もし世界からテキスタイル(布)が消えたなら?を再現した“A world without textiles”

 

日常生活になくてはならない素材といえば、テキスタイル。

IKEAといえば家具メーカー、という印象が強いですが、実はIKEAの商品の多くにはテキスタイルが用いられているため、テキスタイルの品質を大切にしています。

 

しかし、テキスタイルにこだわっています、と伝えても、人々は生活においてテキスタイルの大切さを実感する機会はなかなかありません。

 

そこで、もし世界からテキスタイルが消えたなら?を再現した動画“A world without textiles”を制作してyoutube公式チャンネルで公開しました。

 

 

 

 

その世界では、服がダンボールだったり、椅子はサボテンだったり、

 

ikea2

 

 

靴はゴム製でしょうか、傘も当然ありません。

 

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しまいには、猫をまじまじと見て、毛皮を羨ましがったりします。

 

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この動画には、こんなメッセージがIKEAから沿えられていたようです。

 

テキスタイルのない世界を、頭のなかで思い描いてみてください。

ふかふかな枕はごつごつした切り株に、カーテンは板金製に、ラグは砂場に、そして、ソファはとげとげのサボテン製に替わっているような…。

それは文字通り「硬い」、そして快適とは正反対の「辛い」世界ですよね。

私たちイケアは、(ふだんあたりまえに感じて、忘れてしまいがちな)ソフトな素材、つまりテキスタイルを大切にしています。

それは、「ワクワク」で「フワフワ」、「ロマンチック」で「爽やか」、そして「色彩豊か」で「快適」なもの。

テキスタイルは、私たちを眠りに誘ったり、体をサラッとさせたり、リラックスさせたり、見たくないものをシャットアウトしてくれるもの。

テキスタイルがないと、人生は大変です。

 

 

あえて、バカバカしいほどに現実離れした生活を描くことで、ユーモア豊かにテキスタイルの大切さが描かれています。

 

 

 

これとほぼ全く同じ手法で描かれているのが、岐阜県の関市が制作したPRムービー「もしものハナシ」

 

 

 

 

もしものハナシ、もしもの「刃無し」、ということで、刃物が有名な関市のPRとして、刃物がない世界を描いた動画。

空手チョップで野菜を切る主婦、ガムテープでヒゲを抜く中年男性、お客さんの髪を噛みちぎる美容師…かなりシュールなシーンの連続です。

 

この動画が素晴らしい、とは正直個人的には思っていないのですが、“不便・困難化”の法則の一例であることがわかると思います。

 

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IKEAの例と比較して、なぜ「もしものハナシ」が失笑に近い印象を与えてしまうのかについてはここではあまり言及しませんが、大きな違いは「音楽の使い方」と、それに付帯する動画全体の演出方法だと思います。

IKEAの動画はあくまで、コメディ番組を見ているかのようなバカバカしい演出だったため“笑いどころがわかる”のですが、「もしものハナシ」のようにクラシック音楽とスローモーションで全体をまとめてしまうと、笑いどころに対する強調が薄まってしまい、映像と音楽のギャップで全体が“シュール”でまとまってしまう。

その差かな、と個人的に感じます。

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では、この法則を活用した、別の映像事例をみていきましょう。

舞台をオーストラリアに移して、ラム肉がなくなってしまったとしたら?

 

 

次にご紹介する動画を見るまでは知らなかったのですが、1月26日はオーストラリア・デーというオーストラリアの国民の祝日だそうで、この日は太陽の下でラム肉のバーベキューを楽しむ習慣があるのだそうです。

 

しかし、国外で暮らす人にとっては、この日を楽しむことはできません。

この事実を、ラム肉を思う存分楽しめない、という“不便・困難”へと仕立てあげられないか?

 

そこに着目したラム肉のPR機関が実施したのは、“Operation Boomerang(オペレーション・ブーメラン)”と名付けられた施策でした。

 

この日に合わせて展開されたのは、国外にいるオーストラリア国民に、「ラム肉のバーベキューを楽しめない」という苦しみを味わわせることがないよう、世界各地に専用部隊が飛んでオーストラリア人をオーストラリア・デーに帰国させてしまう、という映像です。

 

 

 

 

まるで映画のようなトーンで、下らないことを本気でやりきっている様がなんともバカバカしくて面白いですね。

 

 

 

これまでご紹介した事例は、いずれも映像の中(=嘘)の世界で極端に演出された施策でした。

ですが、この“不便・困難化”の法則、リアルな世界でも活用できないでしょうか?

 

以下、ひとつだけ別の事例をみていきます。

 

 

 

米大手食品ストアのCSR「ハチの保護」の重要性をショッキングに伝えるには?

 

企業のCSR活動、というと、きっと多くの生活者は「時代が時代だから、とりあえず社会にいいことやってるだけでしょ」という印象をお持ちかもしれません。

 

米大手食品ストア・ホールフーズマーケットは、自然界のハチの存在と農作物の食品系には大きな関係性があるとして「ハチの保護」をCSRで行っていましたが、当然、このスーパーを利用する顧客の多くはこの活動の重要性を理解していません。

 

このハチを守る活動の重要性を伝えるには、どうしたらいいか?

“不便・困難化”の法則にのっとって、こんな施策を実施しました。

 

 

それは、店内に陳列した果物や野菜などの農作物の約半数を、一時的に取り払ってしまうというもの。

 

 

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上記ご覧のとおり、かなりの数の農作物が店頭から姿を消しています。

 

同社によれば、全453種もの店内の農作物からリンゴやたまねぎ、ニンジン、マンゴー、レモンなど237種も除去することになったといいます。

 

 

当日の売上は落ちてしまうと思いますが、大きなコストをかけずにCSR活動の大切さを訴求する、という観点では上手いやり方だと思います。

IKEAやラム肉の例ではあくまで作り物の世界で“もし〇〇がなかったら?”を描きましたが、このように、実世界でやってしまう、という方が、もしかすると今の時代っぽいやり方かもしれませんね。

 

 

 

ですが、この法則、リアルでやるとなると、演出の仕方を間違えるとかえって批難を浴びる可能性もあると思います。

が、物事の価値を再認識させるための手法として、頭の片隅には置いておきたい切り口ですね。

 

 


 

※その他の類似施策は、以下URLにまとまっていますのでご参考ください。
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