多くの人に参加してもらいたい

“謎の欠陥・欠落”の法則

2016年2月4日

 

個人商店から大企業のプロモーションに至るまで、様々な施策において“いかに顧客を参加させるか”に頭を悩ませる機会は多いかと思います。

 

そこで今回は、顧客の参加意欲を掻き立て、行動を喚起する法則のひとつ、“謎の欠陥・欠落”の法則を取り上げます。

 

 

 

屋外広告に突如現れた、数学の難問。その意図とは?

 

google1

 

 

こちらが話題となったのは随分前になりますが、2004年の事例です。

 

シリコンバレーの101号線のサンマテオとレッドウッドシティの間に、突如掲出された奇妙な看板。

そこに書かれているのは、何やら難しい問題…。そこには、

 

 

「{eの値で、最初に出てくる10桁の素数}.com」

 

 

と書かれています。普通の人々にとっては、なんぞそれ、となりますよね。

 

 

しかし、この問題を見つけてしまったが最後、解かずにはいられない人種がいるんです。

それは、マサチューセッツ工科大学やハーバード大学で数学や物理を専攻している、“スーパーブレインズ”と呼ばれる学生たち。

 

彼らはこの看板を見つけると、否が応でも答えが気になってしまい、必死に問題と取っ組み合って解答を求めたそうです。

 

 

そして答えが出たら、看板にもあるとおり「{問題の答え}.com」とありますから、サイトにURLを打ち込む。

すると、Google Labsの求人情報画面が現れるという設計になっていました。

 

 

 

そう、実はこれ、Crispin Porter+Bogusky社が米Google社のために実施した、求人広告のキャンペーンなんです。

当時、今では想像できませんが、Googleは他社に比べて人気がなく、エンジニアリング分野自体も人気が縮小傾向にあったそうです。

 

そんな中、いかに優秀な学生たちに“自分たちはスゴイ/面白い企業なんだ”と思わせながら、応募を促すか。

 

 

様々な調査を通じて発見したのは、彼らは「セックスよりも難問が好き」という、強いインサイト。

 

 

 

であれば、彼らにしか解けないギリギリの難問を用意することで、話題化と応募促進を両立させられないかーー?

 

 

そうした背景から、このようなキャンペーンに至ったのだと思います。

当時はまだSNSがそこまで定着していなかったので広がりは限定的だったと思いますが、それでも大きな話題となったようです。

 

なお、答えはプログラミングができないと解けないので、答えだけネットで調べて知っていても採用にはつながらない、という設計も見事でした。

 

 

 

「人は自分の知識に“隙間”を発見すると埋めたくなる」という普遍性

 

ハーバード大学のとある物理学教授が提唱する、面白い教育方法があります。

 

それは、『コンセプト・テスト』と呼ばれる方法。

彼の授業では、生徒たちが知らないことを順を追ってただ説明していくことはしません。

 

先に答えが割れるような質問をあえて問いかけ、生徒の面前で公開の投票をさせます。

学生本人の立場を明確にさせ、一つの答えに肩入れさせるという単純な行為によって、学生達の結果に対する関心や好奇心を一気に高められる、と提唱しています。

 

具体例を見ていきましょう。

 

 

その効果を実証するために、小学校5、6年生のクラスを2つに分けて、こんな実験を行いました。

 

あるテーマについてディスカッションさせるのですが、一方のクラスは、全員の意見が一致するように誘導。

そしてもう一つのグループは、異論を出しても意見がひとつにまとまらなくてもOKという条件を出しました。

 

その結果が端的に表れたのは、昼休みにテーマに関するDVDを流したときのこと。

 

休み時間をつぶして映画を観た児童の割合は、意見を一致するように導いたグループではたった18%だったのに対し、異論OKとしたグループでは45%でした。

なぜなら、後者のグループの子ども達は、自分とは意見が違う子がいることを意識し、自分の知識の「隙間」が気になって仕方なく、それをなんとか埋めたいと思っていたから

 

puzzle1

 

誰が正しかったのかを知りたいという気持ちが、外に出て、すべり台やジャングルジムで友達と遊びたいという欲求に打ち勝ってしまったということです。

 

こうした教育方法は、いま日本では“協同教育”とも言われ、注目を集めている方法だそうです。

 

 

他の事例として、簡単な例ですが、たとえば理系の授業。

土星の輪っかについて学ぶ際、そのまま知識を与えるのではなく、

 

「なぜ、土星の輪っかは他の惑星には見られないのだろう?」

 

と問いかけ、その答えを一緒に求めるように授業が進めば、子どもたちは興味を惹かれます。

問いかけられるまでは、土星の輪っかなんてたいして興味もなかったのに、です。

 

みんなが知ったつもりになっている物事の知識に“隙間”を見つけてしまうと、それを埋めたくなるのが人の常、ということでしょうか。

 

(ちなみに土星の輪っかについては未だ解明されておらず、3つかそれ以上の説があるようですね。)

 

 

 

思えば、たいして好きでもなかったのに、ベッキーの不倫騒動の裏側やSMAPの解散騒動の真相が気になってしまうのも、自分の知識に隙間を見つけてしまったからですよね。

ゴシップネタがいつの時代も話題になるのは、そういった側面があります。

 

 

話を戻すと、これまで述べてきたように、単純な謎かけひとつで参加行動を誘発できる可能性がある、ということです。

 

以前、公文が、計算をして日にちを書き込むカレンダー“2000+12 CALENDER”なんてものを作っていましたが、毎日の日付を計算問題に変えてしまう、という単純さがワークする素敵な事例だと思います。

 

公文1

 

 

 

また、紀伊国屋書店が実施した“ほんのまくら”フェアも大変話題となりました。

 

良い小説の出だしの一行は魅力的、という事実を活かして、「本の出だしの一行だけをラッピングして、書名・著者名すらわからなくしてしまう」状態にして本を売る、という闇鍋的な売り方です。

 

ほんのまくら2

 

 

 

どれも拡大解釈して言えば、先ほどのGoogleの求人広告と同じ原理が働いている、とも言えそうです。

 

 

 

隙間=“謎の欠陥・欠落”をつくることで社会問題を啓発すると?

 

これまでご紹介してきた、知識の隙間がもつ引力。

 

これを“謎の欠陥・欠落”の法則とここでは名付けますが、社会問題の啓発に応用した事例を最後に見ていきます。

 

 

 

▼ブランコに放置されたランドセルが発するメッセージ“Missing Children”

 

 

 

公園にぽつりと置かれた、ランドセル。

その公園で子どもを遊ばせている親御さんであれば、「どうしたのかな?」と気になってしまいますよね。

 

ランドセルをみる。

するとそこには、その地域で行方不明になってしまった子どもの情報が記載されている、というアンビエント広告です。

 

広告に接触する人の属性、置かれているシーンにしっかり配慮された、強い訴求力のある施策だと思います。

 

 

▼1ピースだけ欠けたホールケーキが持つ意味“LOVE CAKE PROJECT”

 

lovecake1

 

 

こちらは2009年、NGOのWorld Vision Japanの呼びかけではじまったプロジェクト。

 

各ケーキ屋さんとタッグを組んで“1ピースだけ欠けている”ホールケーキをつくってもらい、1ピース分のお金が世界の子どもたちの食糧援助に役立てられる、というもの。

 

 

lovecake2

 

 

1ピースだけ欠けている、ということの意味が、わかりやすい違和感とともに伝わる施策だと思います。

(現在はこのプロジェクトは終わってしまったようですね。残念。)

 

 

 

少々蛇足だったかもしれませんが、個人的に「いかに社会問題をアイデアで解決していくか?」に関心があるため、いくつか応用例をご紹介させていただきました。

 

カテゴリでも「ソーシャルグッドな課題解決」として、それに特化した法則をご紹介していきます。

そちらもぜひ御覧ください。

 

 


 

※その他の類似施策は、以下URLにまとまっていますのでご参考ください。
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Comments

  1. なぜ、漫画「さよならソルシエ」に惹き込まれるのか?ー“ノンフィクションのフィクション化”の法則|アイデアの補助線

    2016年3月2日 at 7:31 PM

    […] (そのメカニズムについては、以前ご紹介した“謎の欠陥・欠落”の法則の、“「人は自分の知識に“隙間”を発見すると埋めたくなる」という普遍性”という章をご覧ください。) […]

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