社会にイイコトしたい

“人外からの叫び”の法則

2016年6月18日

 

当たり前ですが、人は、人以外の生き物・モノと会話ができません。

 

だからこそ、人以外のものたちへの配慮を怠り、彼らの気持ちを汲みとる行為が疎かになりがちです。

その結果が、環境破壊などの社会問題にもつながります。

 

そんな状況においては、時に「人以外のものたちの声」を可視化・可聴化し、人に届けることが有効かもしれません。

今回はそんな法則、“人外からの叫び”の法則を取り上げます。

 

 

 

[Chapter1] 事例から法則を読み解く

世界最小単位の抗議声明、「蟻による環境保護デモ」から目を背けられない。

 

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地球温暖化反対、原発反対、戦争反対、女性差別反対…

 

様々な「反対」の声を上げるために、世界各地で行われているデモ行進。

日本でも近年、SEALDsによる戦争反対デモが全国各地に広まりましたが、デモ行進は時として、社会全体を巻き込む強い吸引力・影響力を引き起こします。

 

しかし、SEALDsの場合は「安倍法案可決」という社会的な時流に乗ることで大きな潮流を生み出しましたが、特に気候変動・温暖化といった“恒常的な問題”においては、強い危機意識(気持ちの盛り上がり)が人々にないため、デモ行進などを行っても広がりは限定的にならざるを得ません。

 

しかし、誰かが声をあげなければ、地球温暖化や環境破壊はますます加速してしまう。

あらためて、人々の目をこの問題に向けさせ、耳を傾けてもらうことはできないか?

 

 

そんな問いを立てたのが、創立50周年を迎えたWWF(世界自然保護基金)でした。

 

彼らは思い悩んだ挙句、「デモ行進」という解決策に行き着きます。

ただ、その方法が一風変わったものでした。

 

それは、蟻による熱帯雨林の環境保護デモ行進、というアイデア。

 

 

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人が声を上げても注目してもらえないなら、人の活動のせいで被害を被っている別の生き物=蟻に声を上げさせたらどうか、ということで、中南米に多く生息する社会性のアリ、ハキリアリの「葉っぱを運ぶ」習性を活かして、環境保護を訴えかける文字がくり抜かれた葉っぱをプラカードに見立てて蟻に持たせて行進させることで、“人間以外の生き物によるデモ行進”を実現させたのです。

 

 

 

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ドイツのケルン動物園で実際に5日間に渡ってデモ行進が展示され、来場者やメディアによる写真・ビデオの投稿・報道により、国内外で話題化。

 

見事、環境保護に人々を再度注目させることに成功しました。

 

 

ハキリアリの「葉っぱを運ぶ」習性への目の付けどころ、それを「デモ行進に見立てられないか」という発想の転換は素晴らしいというより他ありませんが、この事例のポイントは、なんといっても「蟻が人間のマネをして声をあげている!」というユニークさ、それに対する驚きの強さでしょう。

 

 

 

このポイントだけを抽出すれば、他にも同様の例を見つけることができます。

 

たとえば、小さな動物たちのための標識を街中に立てたアートプロジェクト「#TINYROADSIGN」はそのひとつ。

 

 

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私たちが暮らす街は、当然、人間だけのものではありません。

街にひっそりと生息する動物たちも、生き物という視点にたてば、同じ住民なはずです。

 

しかし、そうした動物たちへの配慮は、どうしても欠けがちです。

日本でも、猫やタヌキなどの小動物が車で引かれてしまう交通事故があとを絶ちません。

(実際2011年の1年間だけでも、NEXCO東日本管内の高速道路上では約17,800体の動物が犠牲になったようです。)

 

 

リトアニアの首都、ヴィリニュスでも同様の状況でした。

 

この問題に目をつけて実施されているのが、小さな動物たちのために、人間にその存在と配慮を訴えかけるよう標識で呼びかけるという試みです、

 

 

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この「#TINYROADSIGN」の仕掛けも、先ほどの蟻のデモ行進と原理は同様です。

 

どちらの事例も、私たち人間に対して身勝手な行いへの反省を促し、他の生き物たちへの思いやりの心を掻き立てます。

 

 

人は普段、人にしか興味が無いからこそ、人以外のものたちから声を上げさせる、という切り口。

解決を望む問題によっては、効果的にワークする手法かと思います。

 

 

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[ “人外からの叫び”の法則|Point ]

人が引き起こす社会問題によって「人以外のもの」が悲しんだり怒ったりしていないかを考える

人以外のものが「もし人だったらどのような声を上げるか・対策を講じるか?」を考える

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以降では、この法則を念頭に置きながら、活用イメージをさらに深めていきます。

 

 

 

[Chapter2] 法則から事例を読み解く

「新生児死亡率」を改善するために、誰が声を上げると振り向いてくれるのか?

 

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南米大陸の中央に位置するパラグアイでは、医療体制が充分に整っていないため、大勢の新生児が予防可能な死因によって命を落としているといいます。

 

しかし、その現状をいくら声高に叫んでも、なかなか振り向いてもらえないのも事実。

そんな中、“人外からの叫び”の法則にのっとって、誰から(何から)声を上げさせると、人々をハッとさせられるでしょうか?

 

 

新生児がいなくなると、最も悲しんでくれる、「人以外」のもの。

それはもしかすると、もし新生児が生きていたら遊んでもらえていたであろう、子ども用の玩具たちかもしれません。

 

 

そんな点に着目したのが、ユニセフ・パラグアイでした。

 

彼らは、「新生児のための医療や健康教育への投資」を促すための世論を形成するPR施策として、“新生児がたくさん死んでしまって玩具たちが悲しんでいる”ことを伝えるアイデアを実行しました。

 

それは、具体的にどのように表現すれば、驚きを持って人々に伝搬するのか?

 

彼らは2014年7月18日、通常は子供たちの笑顔で溢れているおもちゃ屋を一斉にクローズさせました。

そして各店舗のショーウインドーに、『赤ちゃんの誕生は人生を変えます。赤ちゃんの死亡も人生を変えます。』とのメッセージを掲げると共に、黒い洋服を着て喪に服している玩具をディスプレイし、幼くして命を落とした子供たちに祈りを捧げさせたのです。

 

 

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この取り組みは瞬く間にメディアの関心を集め、テレビやラジオで繰り返し報道された他、政府に対して対策を求める声が各種新聞の紙面を埋め尽くしましたといいます。

 

 

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結果、遂には大統領にまで国民の声が届き、国民の健康に関する取組みに150万ドルの追加予算を割り当てるとの決定が下されるまでに至りました。

 

この取り組み後、新生児の死亡率が50%も減少したそうです。

これは1年間で730人もの新生児の命を救うことができた、ということを意味しています。

 

 

単なる話題づくりに終止せず、世論を動かして成果にまで結びついた、素晴らしい事例ではないでしょうか。

 

 

 

[Chapter3] ブレスト・トライアル

「地球温暖化」による“星の苦しみの声”をあげさせると?

 

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冒頭でも取り上げた「環境破壊」による“人外からの叫び”を、動物や昆虫以外でもあげさせられないか考えてみます。

 

たとえば、海面上昇によって島自体が消失の危機に瀕している、タヒチ。

 

 

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このような状況であれば、たとえば道端の石ころにも人間的な感情や意識があるのだと解釈すれば、今にも溺れそうで苦しんでいる顔をしているかもしれません。

 

なので、浜辺や島内の岩や石に、今にも溺れそうで苦しんでいる人間の顔を彫り込むといったアート表現には訴求力があるかもしれません。

 

 

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(画像はあくまでイメージ。もっと人間らしく、苦しそうな顔を彫り込みます。)

 

 

また、森の木々も同様な表情をきっと浮かべていることでしょう。

酸性雨や焼畑農業の被害を受けている森の木々にも、苦しそうな表情を掘り込んだり、怒りの表情を浮かべさせたりするアート表現にも可能性を感じます。

 

 

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このような表現をPR施策として環境保護団体が実施することで、地球温暖化や環境破壊の危険性を訴えていく。

 

シンプルですが、ニュース性のある取り組みとして報道されていくかもしれませんね。

 

 


 

※その他の類似施策は、以下URLにまとまっていますのでご参考ください。
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