とにかく注目を集めたい

“状況の逆利用”の法則

2016年5月18日

 

自らの伝えたいことや見せたいものを、いつも関心が持たれた状況でお披露目できるかというと、むしろそうした状況の方が稀でしょう。

 

特に広告は、TVCMであれ屋外広告であれ、「あぁ、またいつもの同じような企業広告でしょ」という態度で見られますから、広告主にとっては有利な状況どころか不利な状況とも言えます。

 

そうした状況下にあって、無理に大きな声を上げるのではなく、広告に接触する環境や自らの置かれた状況をつぶさに観察し、周りにあるものを逆手に取って利用することで不利を有利に変える“状況の逆利用”の法則を、今回は取り上げます。

 

 

 

[Chapter1] 事例から法則を読み解く

「強盗被害」を逆手に取って売上をUPさせたメキシコ料理店がすごい

 

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アメリカ・ラスベガスにあるメキシコ料理店「Frijoles & Frescas Grilled Tacos」のお話。

 

ある日このお店が、深夜に強盗に入られてしまうという不幸なアクシデントに見舞われました。

幸い、レジに現金は入っておらず、また店には誰もいなかったことから、深刻な被害にはならなかったそうですが…

しかしこの事件の翌日、このお店が驚くべき動画を公開したのです。

 

彼らが活用したのは、防犯カメラの映像でした。

事件が起きた2015年12月16日未明、犯人の3人組の男たちがドアを壊して店内へと押し入り、レジを無理やり持ち去っていく犯行の一部始終を収めた映像に、面白おかしくキャプションを付けた動画をYouTubeに公開したのです。

 

 

男がタコスを食べにやってきました。しかし、レストランは閉まっています。

 

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ドアに石のようなものを投げつけるも、びくともせず…
可哀想に、タコスが食べたいんだね。裏口にまわってごらん。

 

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今度は見事ドアを壊すことに成功。本当に食べたいらしい。

 

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一生懸命タコスを探す男たち。

 

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倉庫の中も探します。でも見つかりません。

 

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ママが車でお迎えに来ました。ママもタコスが食べたいんだね。

 

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レジの中にタコスがなかったら、ママはきっとカンカンだよ。

 

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このあと、画面は切り替わり、美味しそうなタコスの写真とともに『人々をこんな行動に駆り立ててしまうほど美味しいタコスですみません。』というメッセージを表示。

 

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最後は犯人たちの顔をアップで映し、逮捕のための協力を視聴者に仰いだうえで、『彼らがそれほど食べたがった当店のタコスを、ぜひ味わいに来て下さいね。』と締めくくる始末。

 

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なんてチャーミングで、ユーモアたっぷりな動画でしょうか。

 

こちらの映像は、YouTube公開後10日も経たないうちに300万回近くも再生されました。

「強盗に遭う」という、その後も顧客から敬遠されがちな状況を逆手に取った、素晴らしいプロモーションです。

 

 

 

この事例から、アイデア発想のための汎用性の高い法則性を抽出するために、もう一つ別の事例を見ていきましょう。

 

 

次にご紹介する事例は、シドニーの有名な観光名所「オペラハウス」が実施したプロモーションです。

 

 

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オーストラリアの「オペラハウス」といえば、このユニークな外観がすぐ目に浮かぶでしょう。

この建物は、オーストラリアで最もインスタグラムに投稿されるスポットでもあります。

 

しかし、このオペラハウスにはある課題がありました。

それは、「外観はみんな撮ってくれても、中にまでは入ってくれない」というもの。

 

事実、インスタグラムに写真を投稿した人の内、実際に建物の中に足を踏み入れたことがあるのはわずか1%しかいないそうです。

 

 

では、どのようにすれば、オペラハウスの中に誘い込むことができるのか。

 

彼らが目をつけたのは、わざわざご丁寧に位置情報付きで、オペラハウスの写真をinstagramで投稿していた人たちでした。

 

 

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スタッフは、ひとつひとつ、リアルタイムでアップされる写真を確認しました。

そして写真を見つけると、それをアップした人にダイレクトメッセージで「舞台の衣装を準備しているの。実際の衣装を試着しにオペラハウスに来て!」とメッセージを送ったのです。

 

 

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この呼びかけに応じ、実際に衣装を着用した様子がまたinstagramにアップされていきました。

(この他にも、オペラハウスからの呼びかけはバラエティーに富んでいたようで、「演奏風景を見に来ない?」「キャストと写真を撮らない?」「キッチンを見に来ない?」「試食してみない?」というものもあったようです。)

 

 

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その名も「#come on in」というキャンペーンでした。

 

オペラハウス内で体験した貴重な経験はインスタグラムに投稿され、わずか4週間で500万人以上にオペラハウス内の様子がシェアされたといいます。

 

 

 

強盗をタコスの宣伝に変えてしまったメキシコ料理店。

外観だけ写真を撮る人を内部に連れ込んでしまったオペラハウス。

 

これら2つの事例に共通して言えることは、決して有利とは言えない「置かれた状況」の中で、利用できるもの(上記の例で言えば、防犯カメラの映像やinstagramの位置情報)を探し当て、追い風となるよう逆手に取って利用してしまう、ということです。

 

非常に高度な観察力と発想力を要しますが、もし有利な材料を探し当てて逆利用することができれば、“目のつけどころが秀逸な”取り組みとして、賞賛の的となるでしょう。

 

 

どんな状況になっても諦めず、悪い環境もむしろ利用できないかと考える姿勢、発想がとても大切になりそうです。

 

 

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[ “状況の逆利用”の法則|Point ]

芳しくない状況でも、諦めず、むしろその状況を利用するくらいの気概を持つ

置かれた状況の中で「使えそうな(有利に働く)材料」を探して逆手に取る

「状況を悪くした(象徴する)張本人」を利用できるとアイデアの強さが増す

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以降では、この法則を念頭に置きながら、活用イメージをさらに深めていきます。

 

 

 

[Chapter2] 法則から事例を読み解く

地上の看板が「上空を飛ぶ飛行機」をアピールする最適な方法とは?

 

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どこの街にもある、屋外広告。

ここの広告スペースをつかって、航空会社が自社の飛行機をアピールしたい、と考えたとしましょう。

 

“状況の逆利用”の法則にのっとると、どのようなアイデアが考えられそうでしょうか。

 

 

 

大手航空会社のブリティッシュ・エアウェイズは、まさに同じ状況に立たされました。

 

普通によくある広告であれば、このスペースに「私たちは安全で上質な飛行の旅をあなたにお届けします」といったメッセージを打ち出してしまいそうですが、この会社は違いました。

 

 

彼らが目をつけたのは、「彼らが使う屋外広告の上空を、自社の飛行機が飛んでいる」という事実でした。

地上の看板でありながら、毎回決まった時間に看板上空を飛ぶ飛行機を利用してしまおうと考えたんですね。

 

 

以下が、実際に実施したアイデアです。

 

 

ロンドン中心部にある、ピカデリーサーカスと呼ばれる広場に設置されたスクリーンに映し出された映像には、一人の男の子が座っています。

 

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すると、おもむろに男の子が立ち上がり、上を見上げながら歩き出しました。

よくみると、その視線の先の上空には、飛行機が実際に飛んでいます。

 

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飛行機を指差す男の子の傍らに表示された字幕には、「見て!バルセロナから飛んできたBA475だよ!」。

 

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“いつも決まった時間に、決まった航空便が上空を飛ぶ”ことを逆手に取り、看板の上を飛行機が通る時間になると、広告内の男の子が連動して反応する仕組みを施したんですね。

 

時間や場所に関係なく流される広告映像と比べると、とてもユニークで思わず目にしてしまう表現となっています。

 

 

 

このように、屋外広告で「周辺の状況を逆手に取って連動させる」表現は、他にもいくつかみることができます。

 

 

スウェーデンのヘアケアブランド「Apotek」は、地下鉄の“電車が通り過ぎる時に巻き起こる風”を利用して、電車が通るときにだけ「モデルの髪が風になびく」ような仕掛けを施しました。

 

 

Apotek Hjärtat – Blowing in The Wind from Ourwork on Vimeo.

 

 

 

上記の仕組みと全く同じ考え方で、「モデルのスカートをなびかせる」プロモーションを、日本ではCanCamが実施していましたね。

 

 

 

 

通常の広告と比べると、非常に注目度の高い表現となりそうです。

 

 

 

[Chapter3] ブレスト・トライアル

あえて「募金をしない人」を数える募金活動はアリかナシか?

 

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この“状況の逆利用”の法則を、街頭募金に当てはめて考えてみます。

 

この街頭募金、残念ながら、募金をする人はそう多くありません。

募金をする気恥ずかしさや面倒臭さ、そしてお金が何に使われるかわからない不信感も手伝って、日本では募金をする人は多くないのが実情です。

 

 

募金のやり方自体をもっと面白く工夫する方法もあるでしょうが、あえて“状況の逆利用”の法則を活用した場合を考えると、真っ先に利用できそうなのが「募金をしない人」だと思いました。

 

「募金をしてくれた人」だけを対象とし、〇〇円集まりました!と募金額を打ち出す。

それもいいのですが、それだけだとやはり、募金活動に関与させられる人は限定的になります。

 

 

であれば、むしろ「募金をしない人」を逆手に取って、彼らの数えるために募金活動をしてみる、という実験が行われたとしたら…

 

「みんな、こんなに〇〇の問題に対して手を貸さないんだ」ということが見える化され、より危機意識が増すかもしれません。

 

 

具体的には、募金活動の旗と声が届く位置をテープ等でマーキングし、募金してくれた人と一緒に、「そこを通過していながら募金をスルーした人」もカウントしていきます。

 

そして、両者の数をリアルタイムで現場に表示するイメージです。

そうすれば、通行者のコンマ数%しか募金していないことが、ありありと可視化されることになります。

 

 

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さらにエゲツナイ表現をするならば、全く同じことを台湾やアメリカなど世界各国でも同時開催し、生中継で各国の募金現場の様子まで観られるようにしてしまう。

 

そうすることで、いかに日本人が社会問題に無関心か、寄付行動ができていないかが、「寄付をしない人がいる」ことによって、ありありと映しだされてしまいます。

 

 

これはどちらかというと、問題“解決”というよりは問題“提起”の考え方ではありますが、誰もが「日本人は寄付をしない」といいながらも実証実験は行っていないので、こうした実験を通して世界に日本の様子をアピールするアプローチもあっていいのでは、と思うのでした。

 

 


 

※その他の類似施策は、以下URLにまとまっていますのでご参考ください。

アイデアの補助線(Pinterest)| 状況の逆利用 の法則

 

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