自分ゴト化を促したい

“因果ショートカット”の法則

2016年4月9日

 

今回ご紹介する法則は、もし上手く活用できれば、アイデアを聞く相手を「なるほど!」と唸らせ、何より実際に、顧客を動かす力が大変強いものとなり得ます。

 

“因果ショートカット”の法則を取り上げます。

 

 

 

[Chapter 1] 事例から法則を読み解く

なぜ「オリジン弁当」は、セブンイレブンの近くに出店するのか。

 

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オリジン弁当。筆者もよくお世話になっているお弁当屋さんです。

 

ですが、この企業、実は明確な「出店計画(どこに店舗を構えるか)」があるのをご存知でしょうか?

 

 

それは極めてシンプルで、ずばり、セブンイレブンの近くに出店する、です。

 

 

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「なぜ?」と思われる方が大半でしょう。

「あ、なるほど!」と勘ぐることのできる人は、大層なキレ者だと思います。

 

 

なぜ、オリジン弁当は、セブンイレブンの近くに出店するのか。

 

それは、「セブンイレブンでお弁当を買う人の気持ち」になってみれば、よくわかります。

 

 

セブンイレブン、つまりコンビニでお弁当を買う時って、「よし!今日のお昼はコンビニでお弁当だ!わーい!」だなんて前向きな気持ちで買いに行くことは、なかなかありませんよね。

 

むしろその逆、「本当は定食屋とかに行きたいけど…時間もないし、でも栄養バランスを考えると、仕方ない、コンビニのお弁当かな」という、後ろめたい気持ちなのではないでしょうか。

 

そしてここにこそ、「オリジン弁当で買いたくなる」ためのヒントが隠されています。

 

 

もしあなたが、「本当は定食屋とかに行きたいけど…時間もないし、でも栄養バランスを考えると、仕方ない、コンビニのお弁当かな」という後ろめたい気持ちで、セブンイレブンに向かったとしましょう。

 

そして入店直前に、セブンイレブン前の大通りを挟んで斜向かいに、オリジン弁当を発見したとします。

 

 

すると、こんな気持ちが芽生えるかもしれません。

 

「嫌々、コンビニ弁当で済まそうと考えてたけど、どうせお弁当を買うなら“お弁当専門店”で買った方が美味しいし、栄養バランスもしっかりしてそう」

 

 

よし、だから今日は、オリジン弁当だ。

そんな風に思ってしまったとしても、なんら不思議ではありませんよね。

 

人の深層心理を突いた、とても上手い方法です。

 

 

さらに、セブンイレブンとしても、様々な分析を経てその場所に出店しているわけですから、そこにはお弁当を買いに来るようなお客さんが一定数見込めるのは、言うまでもありません。

コストのかかる出店計画をセブンイレブンに任せてしまい、かつ、そこに来るお客さんをかっさらってしまおうというのですから、賢いを通り越して、少々エゲつなささえ感じてしまいます。

 

 

また、もうひとつ、重要な視点があります。

 

オリジン弁当は「コンビニでお弁当を買おうと思った」お客さんを奪い取っている、ということを上記述べましたが、むしろ、お客さんがそのような心理状態でないと、オリジン弁当にわざわざ行くモチベーションは低いと考えられます。

「よし!今日のお昼はオリジン弁当のからあげ弁当だ!わーい!」だなんて思う人は、決して多くないし、増やすのも難しいのです。

 

そのことを重々踏まえた上で、このような出店計画ひとつで「オリジン弁当に行きたくなる気持ちのデザイン」まで行っているのですから、秀逸というより他ありません。

 

 

この現象を因果で整理すれば、「今日はコンビニでお弁当か…」という原因に対し、「どうせならオリジン弁当にしてみない?」という結果を、限りなく近い距離・短い時間で呈示することで、手にしたい結果に対する急速な自分ゴト化を図っている、ということ。

 

ゆえに、“因果ショートカット”の法則とさせていただきました。

 

 

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[ “因果ショートカット”の法則|Point ]

自社商品・サービスの利用を「結果」としたとき、その「原因」は何かを考える

見い出した因果を「限りなく近い距離・短い時間」で結びつけられる状況を生み出す

見い出す因果関係は「遠ければ遠いほど」驚きのあるアイデアとして評価される

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以降では、この法則を念頭に置きながら、活用イメージをさらに深めていきます。

 

 

 

[Chapter 2] 法則から事例を読み解く

少子化対策に朗報?!とある企業が仕掛けた「出生率向上キャンペーン」が予想の斜め上すぎる。

 

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日本でも、少子化は長らく問題視されていますよね。

少子化がますます進む昨今、どうすれば出生率を上げることができるのか?

 

…と聞くと、養育費のコストがどうとか、社会不安がどうとか、相当難しい話に聞こえてしまいます。

 

 

そんな中、「こんな方法が?!」という、とてもユニークな施策が行われた国があります。

 

 

それは、デンマーク。

 

福祉国家として名高いデンマークでも、少子化問題が深刻化し、高齢者を支える若者人口減少への対策が急務となっていたそうです。

 

 

そんな中、この問題をどうにかしたい!と立ち上がった企業があります。

 

それは、同国の旅行会社「Spies」でした。

 

 

旅行会社として、どうすれば、少子化問題の解決=出生率向上に貢献できるのか?

 

この問いは、言い換えれば「どうすれば“子作りしたくなる瞬間”をつくれるのか?」ということでもあります。

 

 

 

子作りと、旅行。

その関係性を紐解くために、Spiesが目をつけた、とあるデータがありました。

 

 

それは、

 

 

デンマーク人カップルの旅先での性交渉率は、通常の生活時に比べ46%も向上。

実際のところ、全デンマーク人の約10%が旅先で授かった命である。

 

 

というもの。(本当なのでしょうかね?笑)

 

 

そんな着眼点から、「ロマンチックな旅に出て、子作りしよう」というキャンペーンを展開しました。

 

その名も、“Do it for Denmark!”(我が国のためにしよう!)

 

 

 

 

“Do it for Denmark!”キャンペーンとは、ロマンチックな旅行プランを用意し、カップルに非日常な気分を味わえる旅に出かけてもらって旅先で新しい命を授かってもらおう、というもの。

 

見事、旅行中に妊娠すると、オムツ3年分の他、子連れ旅行が当たるのだとか。

参加するには、キャンペーンサイトにアクセスし、妊娠の確率が高い日程を割出し旅行を予約します。

 

そこまでするか!とツッコミたくなるほど振り切った、インパクト大の施策です。

 

 

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YouTubeに公開された動画は、公開1週間で470万回以上も再生されるなど、注目はバッチリ集めたようです。

 

「出生率向上」という結果に対し、「愛のある旅行」という原因をセットにしてしまう、というこのアイデア。

「そんな方法が?!」という突飛性と「でも確かに!」という期待効果が上手くマッチした、とてもいい因果ショートカットの例だと思います。

 

 

 

ですが、ここまで鮮やかな因果関係を見い出すのは、なかなか至難な技でしょう。

もう少し因果の距離が近い、わかりやすい事例をもうひとつだけご紹介。

 

 

アメリカの伝説的なキャンペーン、「Got Milk?」をご存知でしょうか。

 

 

 

 

アメリカでは、「トーストやクッキー」などのパサパサしたものを食べる時(=原因)には決まって「ミルク」を飲む(=結果)、という食文化があるそうです。

 

このCMでは、男性がトーストを食べた後、ミルクを飲もうとしたら…ミルクがない!!!という衝撃を描き、「Got Milk?(ミルク、足りてる?)」というメッセージを打ち出すことで、「(こんなことにはなりたくないから)我が家もミルクを買い揃えておかなきゃ!」と大勢の人が動いた、歴史に残るキャンペーンとなりました。

 

 

最近では、アメリカではガールスカウトが資金集めのために街角で売るものと言えば“クッキー”ということで、「クッキー(=原因)を売るガールスカウトの横で、ボーイスカウトが牛乳(=結果)を売る」というアイディアを実施していますね。

 

 

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シンプルですが、とても良い取り組みです。

 

 

 

[Chapter 3] ブレスト・トライアル

「空き巣被害」を防ぐための因果関係を見い出すと?

 

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実際にこの“因果ショートカット”の法則の活用を試みるために、たとえば「空き巣被害」について考えてみます。

 

空き巣、というとあまり馴染みがないかもしれませんが、事実、昨年の空き巣などの重要窃盗事件は、10万8,562件もあったといいます。

 

 

では、空き巣に入られてしまう原因とは何なのでしょうか?

 

一般的には「鍵が旧式で空けられやすい」だとか、「家を空けている時間が長くて狙われやすい」だとか、そういった意見が大半を占めてしまうのでしょうが、それ以前にひとつ、大切な視点があるように思います。

 

 

それは、「そもそも街の住民が、“街を見ていない”」ということ。

 

 

冷静に考えれば気づきますが、空き巣をする側の視点に経つと、普段から街を行き交う人が“街の隅々まで目配せ”していたら、少なくともその街では絶対に空き巣に入りませんよね

 

翻せば、「街の住民たちが自分たちの住む街に目配せしているかどうか」が、空き巣被害に遭うかどうかの境目になりそうです。

 

 

ちなみにこれを、犯罪学では「割れ窓理論」といいます。

“建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないという象徴になり、やがて他の窓もまもなく全て壊される”という考えで、割れた窓を見た人が、「この場所は防犯に配慮していない」と感じて犯罪を起こしても大丈夫ではないかと考えることから、犯罪の発生件数が増えてしまう現象です。

実際、重犯罪の多かった1990年代当時のニューヨーク地下鉄では、この理論に基づき「構内の落書き」こそが治安の悪さの“象徴”ととらえ、重犯罪を取り締まるのではなく、徹底的に落書きを消したことから、結果犯罪件数も激減しました。

「犯罪」という結果を、「落書き」という原因から捉える、まさに“因果ショートカット”のお手本のような事例です。

 

 

 

さて、上記の仮説が正しければ、「住民の街への無関心」こそが割れ窓となっているはずです。

つまり問題は、「どうすれば住民たちの目を、自然と街に向かわせることができるのか?」ということ。

 

そんな疑問にぴったり答える、まさに“因果をショートカットする”記事を先日見つけました。

 

 

玄関前の花壇が防犯対策に!?「花」を飾るだけで効果がある意外な防犯対策とは?

 

 

この記事には、こんなことが書かれています。

 

 

人通りの少ない路地裏などで花を育てるなどの美化運動のお陰で、空き巣被害が4分の1に激減した。

 

花の手入れをしていると、通りがかりの花好きの人が足を止めて話しかけてくる。一寸、家でお茶でも如何?思いがけない”花談義”に。これでは、空き巣狙いもお手上げだ。

 

 

「空き巣防止」という結果に対し、「花壇を植える」という原因の呈示。

突飛なアイデアのようでいて、とても納得性の高い切り口だと思います。

 

 

 

で、あれば。

 

空き巣被害の多い地域が率先して「街中ガーデニングコンテスト」なるものを開くのは、課題解決にとても効果的だと考えられます。

 

 

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それは、「住民たち自身の手で行う」コンテストでもよいでしょうし、「日本一のガーデニング師を決める大会」の開催地をその地域に選定してもいいでしょう。

そういった大義名分を背負って、「サカタのタネ」などの花の種を売るメーカーや「ケーヨーデイツー」などのホームセンターが主催者、空き巣の多い地域が後援として、大会を実施するわけです。

 

(イベントとして盛り上げることで、うまくすればガーデニング愛好者も増えて企業メリットも生まれるかもしれません。)

 

 

 

種メーカーやホームセンター企業のみなさん、空き巣被害の多い街の市長さん、いかがでしょうか。

 

そういった取り組みが増えていくと、ポジティブなパワーでもっと、世界はより良く変わっていくかもしれませんね。

 

 


 

※その他の類似施策は、以下URLにまとまっていますのでご参考ください。

アイデアの補助線(Pinterest)| 因果ショートカット の法則

 

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