商材に別の光を当てて生き返らせたい

“原体験のデジタル拡張(=魔法使い化)”の法則

2016年4月5日

 

デジタル技術の発達が目覚ましい昨今、その応用はWEBだけの世界に留まらず、リアルな現実世界との融合がどんどん進んでいます。

(その際たる例が、IoT、モノのインターネット化と呼ばれるプロダクトの台頭でしょう。)

 

ゆえに、これまでリアルなモノ単体としての機能・価値しか持っていなかったものでも、デジタル技術を上乗せすることで、新たな価値を獲得することが可能です。

 

今回は、私たちが様々なプロダクトを利用する上で、「ついこうしてしまう」ような原体験を、デジタル技術を用いてまるで魔法使いになれたかのような新しい体験につくりかえてしまう“原体験のデジタル拡張(=魔法使い化)”の法則を取り上げます。

 

 

 

[Chapter 1] 事例から法則を読み解く

「シャボン玉の影」が、鳥や風船に変化するアート作品が神秘的。

 

最初にご紹介する事例は、 ”息を吹き込むことで幻想的なシャボン玉が映し出される” というアート作品「Cave aux Bulles (Bubbles’ Cellar)」です。

 

 

Cave aux Bulles (Bubbles’ Cellar) from Guévaux 2013 on Vimeo.

 

 

大きな壁面の前に設置された、シャボン玉のつくる時の、あの”穴”。

そこに息を吹き込むと、センサーが感知し、壁いっぱいに幻想的な「シャボン玉の影」が映し出されます。

 

 

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シャボン玉の影は、鳥やバルーンなど、ちょっとメルヘンなものに姿かたちを変えていく。

 

とても素敵なアート作品だと思います。

 

 

 

…が、これを「素敵だね」で終わらせてしまうとアイデアに汎用性がなくなってしまいますので、もう少し考察してみます。

 

 

まず、このアイデアを発想するにあたっての着眼点として、「シャボン玉」というプロダクトそのものに対する鋭い洞察が伺えます。

 

 

息を吹き込むと、不思議なまぁるい玉ができる。

子どもからしたら、まるで自分が魔法使いにでもなったかのような、そんな気持ちになれるものなのかもしれません。

 

息を吹き込んだらどうなるのだろう、というワクワク。

そして息を吹き込んだ後、不思議な物体をつくれる、というドキドキ。

大人もシャボン玉をつくる瞬間は、童心にかえってそんな心境になりますよね。

 

子ども(の頃)の豊かな想像力を背負って生まれるシャボン玉は、だからこそ、鳥やバルーンに変身してもいいし、むしろすべきだったのかもしれません。

 

 

シャボン玉をつくる、という誰しもが持つ原体験の本質をとらまえ、デジタル技術をつかって、その価値を最大限に拡張する。

その結果、まるで魔法使いになれるような体験が生まれる。

 

 

この事例を一段階レイヤーをあげて解釈すると、そんなことが言えるのではないでしょうか。

 

 

 

似た事例として次にご紹介するのは、広くあまねくみなに原体験があるわけではないかと思いますが、「オズの魔法使い」のファンであれば誰しもが一度は、真似したことがあるものかもしれません。

 

”かかとを3回打ち鳴らすと家に帰れるドロシーの魔法の靴”から着想を得たウェアラブルデバイス、「Dorothy」です。

 

 

Dorothy from ISL on Vimeo.

 

 

デバイスは小さな板のような形状をしています。

 

このウェアラブルの機能は、オズの魔法使いのドロシーよろしく、「かかとを3回打ち鳴らすことでスマホが起動し、誰かに電話をかけたり位置情報を送れたりする」というというもの。

 

 

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退屈な会話の際中に、かかとを3回打ち鳴らして事前に登録しておいた連絡帳から誰かに電話をかけ、会話を打ち切って抜け出すことができたり、

 

 

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あるいは誰かに位置情報を送ることや、Uberと連携してタクシーを呼ぶこともできます。

この機能は、当然の事ながら、万が一誘拐などの被害にあった際、“犯人にバレずに自分の位置情報を知人に知らせる”といった用途での活用も考えられます。

 

 

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このアイデア、筆者が見た中で一番「ウェアラブルデバイスで、純粋に欲しい」と思えたプロダクトでした。

本論とは少し逸れてしまいますが、そう感じられた理由を、以下簡単に記しておきます。

 

 

このウェアラブルデバイスの特異な点、それは、通常のウェアラブルデバイスの機能である「着用するだけ=いつでも機能が作動し効果を堪能できる」というものをあえて捨てているということ。

 

使用者にしかわからない“おまじない”を通じて、人知れず機能が作動する、というところに、何か悪いことをたくらむようなワクワク感が生まれています。

 

 

ここに筆者は、ウェアラブルデバイスに対する漠然とした不信感の正体と、ウェアラブルデバイスのより良い在り方のヒントを垣間見たように思います。

 

 

というのも、もともと筆者は、Google GlassやNIKE FUEL BANDといったウェアラブルデバイスに対して、不信感というか、「そんなもの、本当に使うのか?」という疑念、うさんくささがありまして。

 

それは、これらのプロダクトが、人が暮らす上で本当に必要、あるいはとても刺激的、という印象がどうしても薄かったからかもしれません。

 

 

たしかに、目の前の光景に対して様々な分析情報がいつも浮かび上がったら、楽しいのかもしれません。

自分の運動量が逐一計測され、チェックできるのは、物珍しくて面白いのかもしれません。

 

しかし、いつも情報がほしいわけでもありませんし、知らないほうが自然と、目の前のものと向きあえていいこともあったりする気がしてしまいます。

 

「そんな余剰な機能を、いっつもは求めないよ」

「そんな余剰な機能のために、今の行動・習慣を変えるのは面倒だよ」

 

そんな思いが、どこかにあったのだと思います。

人間の能力や生活環境を「勝手に」「常時」アップデートされてしまうことが、かえってなんだか億劫で、いいものなのかどうなのかわからないという思い。

 

 

一言で言えば、いつの間にか「機械 > 人間」という構図の中で、機械に人間が合わせて生活する息苦しさに違和感があったのだと思います。

そう、これまでのウェアラブルには、機械都合で自分が縛られ、機械に人が合わせなければならないことに、潜在的なストレスを抱えていたんですね。

 

 

しかし、この「Dorothy」はあえて、“いつもは起動しない”という機能を持ちます。

そして、自分にしかわからないおまじないによって、相手に知られずに自分が魔法のような機能を使うことができる

 

そこには、自分が相手の上に立てるかのような、ちょっとした優越感、高揚感があります。

 

 

つまり、あくまで「人間 > 機械」という構図は崩さずに、人間の能力を拡張する機能を“自分の思うままにコントロールして使う”ことができる、という要素は、ウェアラブルデバイス、そしてデジタル技術で原体験を拡張するようなプロダクトにおいて、大変重要なファクターだと考えられます。

 

 

これらの商品は、確実に生活を、世の中をより豊かにしていく可能性を秘めていますので、今後どのようなプロダクトが生まれるか楽しみですね。

 

 

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[ “原体験のデジタル拡張(=魔法使い化)”の法則|Point ]

子どもの頃の経験や想像力を伴うような「ついこうしてしまう」原体験を探す

原体験のワクワク・ドキドキを最大化させる「拡張機能」をデジタル技術で施す

「人間 > 機械」という構図は崩さず、魔法使いになれる気分を大切にする

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以降では、この法則を念頭に置きながら、活用イメージを深めていきます。

 

 

 

[Chapter 2] 法則から事例を読み解く

「積み木」という遊びの持つ想像&創造性をデジタルで拡張すると?

 

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誰しもが一度は幼いころ、「積み木で遊ぶ」ということを経験していますよね。

 

バラバラの形状の木を、積み重ねる。

たったそれだけで、子どもの想像力を持ってすれば、建物や乗り物など、様々なモノが創造されていきます。

 

この原体験を、デジタル技術をつかって、拡張できないでしょうか?

 

 

そんな問いから生まれたのが、チームラボの作品「Connecting! Train Block / つながる!積み木列車」です。

 

 

Connecting! Train Block / つながる!積み木列車

 

 

 

積み木を並べて、列車や車が走る街を作ります。

 

積み木の色によって、線路や道路ができ、色々な積み木を置く事で、列車や車が走り、街は発展します。

同じ色の積み木を繋げていくと、乗り物は進化します。

例えば列車は、普通列車からはじまり、最終的には最新型の列車を走らせることができます。

 

teamLab HPより

 

 

上記の説明の通り、このプロダクトは、子どもが積み木で遊ぶ際に発揮する想像力・創造力を、プロジェクションマッピングを使って可視化してしまう、というもの。

 

 

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また、本来であれば別々に(個々に)遊んでいたはずの子どもたちの積み木に道路や橋をかけ、他の子どもが遊ぶ積み木とつなげ、そこに車や電車を走らせてしまう。

それにより、一緒に遊ぶはずのなかった子どもたち同士を結びつけ、共に遊ぶキッカケを提供しています。

 

そうした“他者とのコミュニケーション”を自然発生的に生み出している、という意味でも、素晴らしい仕掛けだと思います。

 

 

 

他にも、例えば車のおもちゃで遊ぶ時、「ブーン!」と、思わず擬音語でエンジンの音を真似してしまうことってありますよね。

 

そんな着眼点から、日産が手掛けた施策 「Voice Driver Cup」では、『声』を動力として動くおもちゃの車を開発。

PCやスマートフォンにむかって「ブーン!」と叫ぶと走り出す、という車をつかった大会を、プロモーションとして開催しました。

 

 

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いい大人たちが大はしゃぎしてしまうのも、「ブーン!」と思わず口ずさんでしまう原体験を豊かに拡張しているからこそだと思います。

 

 

 

[Chapter 3] ブレスト・トライアル

公園の遊具をデジタル拡張してみると?

 

これまで述べてきた“原体験のデジタル拡張(=魔法使い化)”の法則にのっとると、公園はまさに、デジタル拡張し得るプロダクト(遊具)の宝庫ともいえます。

 

 

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であれば、たとえば、ということで。

 

筆者が拙いなりに、「こんな遊具があったら使いたい!」というものを、“原体験のデジタル拡張(=魔法使い化)”の法則にのっとって、いくつか以下考えてみました。

(絵に関しては本当に拙く、見にくくて申し訳ありません。。)

 

 

―――

縄跳びをする時は「空を飛んでる」心地がするから

縄跳びを跳べば跳ぶほど“宙に浮く”映像を床に投影する「縄飛行」

―――

 

airline

 

 

―――

砂遊びでつくったお城は「魂がこもっている」心地がするから

砂の作品を“リアルでもWEBでも”実体化する「Sand Printer」

―――

 

sand

 

 

―――

滑り台を滑り落ちる際に「地面を通り抜け」たら楽しいから

滑り台に“地球の中を旅する360度映像投影ボックス”を設置する「地球の入り口」

―――

 

entrance

 

 

―――

ブランコで風を切る音で「音楽を奏でられる」と楽しいから

ブランコの鎖を“縦笛”に変えて音を奏でる「Swinging Music」

―――

 

swinging

 

 

 

いかがでしょうか…?

 

アイデアの質はともかく、“原体験のデジタル拡張(=魔法使い化)”の法則を活用する幅、可能性を、少しでも嗅ぎとっていただけたら嬉しいと思って記載させていただきました。

 

ぜひご自身でも、「こんな遊具が公園にあったら」とお考えいただけばと思います。

きっと、楽しいですよ。

 

 


 

※その他の類似施策は、以下URLにまとまっていますのでご参考ください。

アイデアの補助線(Pinterest)| 原体験のデジタル拡張=魔法使い化 の法則

 

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