多くの人に参加してもらいたい

“権威の開放・私物化”の法則

2016年3月3日

 

自然、公共物、人気コンテンツ、企業の広報物、などなど。

 

一見すると何の関係もなさそうですが、「これらを自分勝手に操作したり関与したりできるか」といわれると、きっと多くの一般生活者にとってはできない(してはいけない)とされる、いわば権威あるものとも言えます。

 

しかし、だからこそ。

それら権威の一部が開放され、「誰でも好きに参加/所有していいよ」となったら、きっと多くの人がワクワクして参加したくなるものになるのではないでしょうか。

 

今回はそんな法則、“権威の開放・私物化”の法則をご紹介します。

 

 

 

[Chapter 1] 事例から法則を読み解く

「星空の世界遺産」を目指す“星の降る村”の試み。

 

decapo

 

 

この写真、息を呑むほど素晴らしい星空ですよね。

 

舞台はニュージーランド南島に位置する村、テカポ。

色鮮やかな湖と石造りの小さな教会が佇む、人口300人ほどの小さな村です。

 

観光資源といったものがほとんど見られないこの村に多くの観光客が訪れるのは、上記の写真の通り、星空が大変美しいから。

実は、この星空の美しさを世界に伝え広めたのは、日本人の小澤英之さんという方なんですね。

 

 

tecapo

 

 

小澤さんの始められた「スターウォッチング・ツアー」によってテカポは有名になりましたが、しかし人が集まるとともに、都市開発の波にさらされます。

 

都市開発とはつまり住宅や産業工場が増えて街に光があふれることを意味しますから、世界一とも言える星空は失われてしまいます。

 

自治体は何十年も前から街灯の灯りもコントロールし、上に光が漏れないように傘がかけるなど工夫を凝らしてきましたが、この大きな波には逆らえそうもありません。

 

 

tecapo1

 

 

では、どうすればこの開発を波をとめ、いつまでもテカポの星空を残せるのでしょうか。

 

 

そこで小澤さんが思いついたのが、テカポの星空を「世界遺産」として登録するというアイデアでした。

 

 

世界遺産にしてしまえば、星空の保護が最優先事項となるため、むやみな開発事業に待ったをかけられる。

 

そうして実際、テカポは世界初の「スターライト・リザーブ(星空保護区)」として指定され、さらにいま、世界初の「星空の世界遺産」に登録される最も近い立場となりました。

 

 

これまで、砂漠や熱帯雨林などの「地球と一体・隣接している」大自然に対しては、保護対象として扱うことはありました。

 

しかし、今度の相手は「星空」。人の手が届かない空間と恒星の光です。

それゆえに、人は大いなる畏怖を感じ、自分たちの手元に「所有」「管理」するといった発想を抱けなかったように思います。

 

だからこそ、「星空の世界遺産」というアイデアには、僕も初めて聞いたとき、正直ぶっ飛びました。

 

あの星空を、人が触れてはならない“権威”を、保護という行為を通して関与・所有すること。

そこに人は大きなロマンと興奮を感じてしまうからこそ、多くの人が賛同・参加するムーブメントとなったのでしょう。

 

 

 

ただ、例外として、似た事例に「天体という権威を開放し、私物化できる」制度がひとつありますね。

「月(もしくは火星)の土地を購入する」というアイデアです。

 

 

moon

 

ルナエンバシージャパンでは、月と火星の土地が買える(火星は現在休止中)。

 

 

手元に賞状やカードが残せるのが、なんともいいですね。

(調べていたら欲しくなって、とりあえず月の土地を1エーカー買ってしまいました笑)

 

 

こういった、「自分が関与できるできるわけない」と思っていた“権威”を開放し、私物化するチャンスを与えることで、人に参加意欲を掻き立て、行動を促す強い力が発揮できると考えられそうです。

 

 

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[ “権威の開放・私物化”の法則|Point ]

一般人が「関与できない」と思い込んでいる権威に目をつける

権威を構成するイチ部分を「開放」し、「自由な操作・私物化」を可能にする

手元に残る、参加の「実感」「痕跡」を残せると強さが増す

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以降ではさらに、この法則の活用イメージを深めていきます。

 

 

 

[Chapter 2&3] 法則から事例を読み解く&ブレスト・トライアル

公共物、人気コンテンツ、企業の広報物…様々な“権威”を開放・私物化すると?

 

この章では、“権威の開放・私物化”の法則にあたるような様々な事例を紹介していきたいと思います。

ぜひ、一緒にアイデアを考えるつもりで読み進めてみてください。

 

 

▼権威=公共物 の一部を開放して、子どもたちの遊び場にしてしまうには?

 

公共物って、基本的には一般市民は「関与したり操作したり出来ない」ものですよね。

ゆえに、自分都合でいじれたりしたら、興奮を覚えて参加したくなるはずです。

 

そう、たとえば、「公共の壁を開放して、子どもの遊び場にする」を例にして考えます。

 

 

Girl pointing to orange tree mural on wall

 

 

壁、を構成する要素のどの部分を、開放して、子どもたちが自由にいじれるようにすると面白そうでしょうか?

 

 

まず、パッと思いつくのがデザイン

といっても、自由に落書きしてよしだと、ヤンキーのスプレーの落書きと変わりませんよね。

 

でもたとえば、落書きは落書きでも、「すぐ消せて、しかも動く」なんてギミックが施されたらどうでしょう。

 

チームラボの「お絵かき水族館」では、子どもたちがアナログで描いた生物をスキャンすると、壁いっぱいにプロジェクションマッピングで投影してくれるというものでした。

 

 

labo

 

labo2

 

Sketch Aquarium / お絵かき水族館

 

 

また、デジタル技術を使って壁に投影せずとも、そもそも「壁の表面がパズルのように動く」ことで、通りかかった人は自由に遊べて楽しいかもしれません。

 

ロンドンで行われたインスタレーションアートでは、壁をこんな遊び場に変えてしまいました。

 

 

central

 

 

何かメッセージを残したり、絵をつくったり。

非常に自由度の高い遊びで「公共の場を自分のものに」してしまうのが、さぞかし快感でしょうね。

 

 

 

▼権威=人気コンテンツ の一部を開放して、自分だけのオリジナル〇〇をつくるには?

 

人気コンテンツ、とひとくくりにしてしまいましたが、ここには人気のゲームやキャラクター、タレントなんかも含まれるでしょう。

 

 

たとえば、レーシングゲーム。

基本的にはマシンもコースもゲーム内に最初から用意され、様々なステージをクリアするごとに新しいパーツやマシン、コースが追加されていくようなものが大半だと思います。

 

しかし、レースコースの一部をユーザーに開放すると、どうなるでしょうか。

 

「自分だけのオリジナルコースをつくって競争できる」というアイデアが思い浮かびますよね。

きっと、そのゲームのファンにとってはたまらないものになります。

 

そこに目をつけた韓国の大手自動車メーカー・KIAが開発したのは、「GT RIDE」という3Dゲームアプリでした。

このアプリの最大の特徴は、“スマホを持って空中に描いたコースが、実際にゲームで遊べるようになる”という点。

 

 

gt

 

 

 

とても面白い視点だと思います。

 

 

 

別の権威、人気キャラクターのガンダムの場合を考えます。

 

たとえば「ガンダムの設計図」を開放し、素材からつくれるようにすることは可能でしょうか?

実際に3Dプリンターが普及すれば、将来プラモデルはデータ販売にもなりうるはずです。

 

 

gundam

 

gundam2

 

 

もしできるようになれば、ガンダムファンは自分だけのオリジナルガンダムも作り始めそうですね。

 

 

 

では、タレント、という非常にアンタッチャブルな権威についても考えてみます。

 

特にアイドルファンであれば、握手できるだけでも感動モノだと思うのですが…

もう少し踏み込んで、アイドルタレントの一部を開放し、ファンを参加させ、何かを一緒につくり上げることはできないでしょうか?

 

 

たとえば。

「ファンに写真集のカメラマンを担ってもらう」というアイデアで出版された、みんなの山本彩という写真集があります。

 

 

aya

 

aya2

 

 

街でNMB48・山本彩さんを見かけたら取り放題、という企画から生まれた3rd写真集なのだそうなのですが、「オリコン週間“本”ランキング」の写真集部門で堂々1位を獲得ほど人気に。

 

そりゃあ、自分で撮った写真が写真集の公式カットに採用されていたら、大興奮ですよね。

とても素晴らしい企画だと思います。

 

 

 

▼権威=企業の広報物 の一部を開放して、みんなで広報誌をつくるには?

 

最後に、一般人がタッチできようもない企業の広報物の一部を開放して、みんなでつくり上げていく方向性を。

 

 

たとえば、レストランのメニュー表を考えてみましょう(厳密には「広報物」ではありませんが…)。

 

メニュー表に載っている写真といえば、レストラン側が独自で撮影したものが普通です。

でも、見栄えのよい料理であればあるほど、多くの人が写真にとって保存していますよね。

 

 

1

 

 

そこに目をつけたNYの人気レストラン「Comodo」が実施したのは、“The instagram menu”という施策。

 

「Comodo」では、料理の各メニューの下部に、「インスタグラムでハッシュタグ“#comodomenu”のついた料理のイメージを見てみて」と記載しました。

 

 

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「Comodo」で食事をした他のお客さんが撮影、投稿した料理の写真が見られるという仕掛け。

よく高級料理店だと写真が載っていなくて、どんなものが出てくるのかイメージ出来ないこともありますが、これなら安心して料理を頼めます。

 

何より、自分たちでレストランのメニュー表をつくらせてもらえるような感覚が、とても参加意欲をくすぐります。

 

 

The Instagram Menu from RXM Creative on Vimeo.

 

 

 

この施策と同様の発想で、#TheAfricaTheMediaNeverShowsYouという、メディアには登場しないアフリカの“本当の美しさ”を自分たちで発信しよう、という運動があります。

 

 

africa

 

 

アフリカ、ときくと、メディアでは貧困や飢餓、内紛ばかりを取り上げるので、ネガティブなイメージが強い。

であれば、実際にアフリカに住む自分たちの写真で、世界に本当の姿を届けようという運動として広まっています。

 

そのまま、政府の公式キャンペーンとして展開すれば、もっと面白いなぁと思いました。

 

 

 

今回の記事は、バラバラと多数の事例をご紹介させていただきました。

 

いずれも、強く参加意欲・行動を喚起する力を秘めていると思いますが、そのメカニズムとしての“権威の開放・私物化”の法則を少しでもイメージいただけましたら幸いです。

 

 


 

※その他の類似施策は、以下URLにまとまっていますのでご参考ください。

アイデアの補助線(Pinterest)| 権威の開放・私物化 の法則

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Comments

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    2016年3月20日 at 12:09 PM

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