好感度・ロイヤルティを高めたい

“ヒーロー扱い”の法則

2016年2月23日

 

今回、取り上げる法則は名前の通り、普通の人をヒーローのように扱う“ヒーロー扱い”の法則です。

 

様々なメディアでもてはやされるのは、何かすごい技の持ち主や、偉業を成し遂げた人がほとんど。

でも、普段通りに暮らし、みんなもそうしているけれどひたむきに努力し続けている多くの人は、果たして賞賛に値しないのでしょうか?

 

そう問われると、それも違うように思います。

 

普通の人にスポットライトを当てて、応援や賞賛を通じて、人々の好感を獲得する。

そんな法則のご紹介です。

 

 

 

[Chapter 1] 事例から法則を読み解く

ビタミンウォーターが運動好きな人から愛されるために行った施策に心が温まる。

 

最初にご紹介する事例は、2012年のロンドンオリンピック開催中にビタミンウォーターが実施した施策です。

 

ビタミンウォーター、といえば、運動するすべての人を飲料から支え、応援するブランド。

このブランドに限らずですが、スポーツ飲料メーカーがオリンピック開催時に実施する施策、といわれてすぐにイメージできるのは、その国のオリンピック選手を広告等に起用して、派手なコマーシャルを打ち上げることでしょう。

 

(日本でも、ロンドンオリンピック開催中のCM等では、日本代表の体操選手やバレー選手の姿をよく目にしたと思います。)

 

 

しかし、ビタミンウォーターが着目した点は、違いました。

 

確かにこの時期注目されるのはオリンピック出場選手でしょうが、日の当たらない毎日でも、不断の努力を続けるアスリートたちはたくさんいる。

何も有名な選手だけでなく、すべてのアスリートを応援するブランドとして、今こそその姿勢を発信できないか?

 

 

そんな思いから放映されたCMが、“SID LEE”です。

 

普段通りにバスケットコートやプールなどでスポーツを楽しんでいる人々の付近に、突然マイクを持ったアナウンサーが登場します。

そして、まるでオリンピックの実況中継をするかのように、スポーツに励む彼らを実況し応援し始めるという様子が描かれます。

 

 

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オリンピック開催中、このCMを目にしたアスリートの多くは、きっとビタミンウォーターのことを少しでも好きになったのではないでしょうか。

 

スゴイ人たちばかりが注目されるタイミングだからこそ、メディアに出る人ばかりが特別なのではない、という当たり前だけど響くメッセージを発すること。

普通の人にこそスポットライトを当てて、応援や賞賛を惜しまないこと。

 

とても温かい気持ちになる施策です。

 

 

少し似た施策で、これは企業活動ではありませんが、日常をハックする楽しみを毎回教えてくれる「ImprovEverywhere」という団体が仕掛けた“The Mini-Golf Open”という施策も、同じような構造になっています。

 

舞台はマンハッタンのとあるミニゴルフ場なのですが、そこで遊ぶ子どもたちをあたかも「プロゴルファー」に見立て、全英オープンさながら超本格的に大人が盛り上げるというイベントです。

 

 

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子どものために「大人の本気を見せる」感じが、子どもを喜ばせるためにサンタクロースを演じる親を見ているようで、とても幸せな気持ちになります。

 

このイベントを経験した子どもたちの中から、プロゴルファーを本気で目指す子も出てくるかもしれません。

ゴルフメーカーこそ、このような取り組みをすることでブランド愛が深まりそうですよね。

 

 

これらの事例から、法則のポイントを以下まとめます。

 

 

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[ “ヒーロー扱い”の法則|Point ]

「誰を応援し、誰に愛されたい存在なのか?」を再認識する

愛してほしい人の「日の当たらない日常や努力」に寄り添って励ます

特に「特別な人ばかりが賞賛される」タイミングで行うとインパクトが増す

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以降では、この法則を念頭に置きながら、活用イメージを深めていきます。

 

 

 

[Chapter 2] 法則から事例を読み解く

世界中の母親を感動させた“Thank you, Mom”の強さ。

 

広告業界ではあまりにも有名な事例なので、わざわざ取り上げるべきか悩みましたが、やはり素晴らしいものは素晴らしいのであらためてご紹介を。

 

こちらの事例も、ロンドンオリンピックに実施されたキャンペーン。

グローバル日用品メーカーのP&Gによる“Thank you, Mom”という施策です。

 

 

P&Gはロンドンオリンピックの協賛企業でもありましたが、冷静に考えれば疑問が浮かびます。

それは、「母親が普段使う日用品メーカーが、なぜオリンピックのスポンサーを?」ということ。

 

オリンピックのスポンサードを行うことで、国中の人が注目する競技の合間にCMを放映できたりするわけですから、企業的には自社をアピールする絶好のチャンスを獲得する、という意味では協賛するメリットはあります。

(このチャンスを得るために必要な「協賛金」はバカにならないわけですが…)

 

ただし、スポーツの祭典と日用品メーカーにどんな関係が?と問われると、正直、ブランドとして明確な回答を持ち、それを人々に伝えることのできているブランドは、P&Gに限らず決して多くありませんでした。

オリンピックの協賛は、商業的な意味合いが強すぎたのです。

 

 

ここで、“ヒーロー扱い”の法則の観点から考えます。

 

P&Gは誰を応援し、誰に愛されるべきブランドなのか?

愛してほしい人たちは、このオリンピックというイベントにどう関わり、影の努力をしているのか?

 

 

P&Gの商品の多くは、家庭用品。つまり母親のためのブランドです。

そしてもちろん、オリンピック選手たちにも母親がいます。

 

しかし、活躍するオリンピック選手たちはスポットライトを浴びても、その母親たちにまで脚光を浴びることはありません。

 

 

であれば、オリンピックが開催されるタイミングだからこそ、選手たちをずっと影で支え続けた母親たちの存在にもスポットライトを当てることは出来ないか?

 

 

きっとそんな発想から生まれたのが、“Thank you, Mom”というキャンペーンの中で放映されたCM、“Best Job”

 

世界各地の母親が、オリンピック選手たちが幼少期の頃から世話をし続け、成長を見守る姿を描きながら、ついに晴れ舞台で活躍する我が子に感激する様子が描かれます。

そして最後は、「世界で一番ハードな仕事は、世界最高の仕事。ありがとう、お母さん」というメッセージ。

 

 

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P&G / Best Job from Karl Lieberman on Vimeo.

 

 

着眼点、メッセージの強さ、そしてそれを伝えきるドラマチックな演出。

すべてが素晴らしく、いま観直しても思わず泣けてしまいます。

 

 

きっと多くの人が、一度もメディア等で特別扱いされ、賞賛される経験もなく、一生を終えます。

でも、メディアにも載らない、映画化もドラマ化もされないような人生は豊かではないのかというと、絶対にそんなわけはありません。

 

矛盾しているようではありますが、見方やタイミングを少し考えるだけで、あらゆるメディアで全ての人生は讃えられ得るし、人の心を強く打ちもする。

 

あなたの目の前の顧客、大切な人にも、きっとそんな瞬間があるのだと思います。

 

 

 

[Chapter 3] ブレスト・トライアル

受験や部活動に励む子どもだけでなく、どうか母親も讃えてほしい。

 

この想いは、ひどく個人的な経験から生まれたものです。

僕が高校受験をしたときのこと。今でも忘れられない記憶があります。

 

当時、某都立高校の合格を目指して、日々勉強の毎日でした。

僕は地元の小さな塾に通いながら進学校を目指していたので、いま思えば母親はとても不安だったのでしょう。

でも僕はそんなことにも全く気づかず、机に向かい合って勉強のことばかり考えていました。

 

そして迎えた受験。その後の合格発表の時のこと。

親は車で高校まで送ってくれたのですが、合格発表の掲示板は一人で見に行きました。

 

ドギマギしながら掲示板を見る。

僕の番号はどこだ。どこ? …あ、あった!

 

 

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僕はほっと胸を撫で下ろし、喜びに浸かったと思うのですが、正直その時の記憶は曖昧です。

 

なぜなら、その後、車に戻って母親に受かったことを報告した時、母親が泣き出してしまったから。

その姿がとても印象的で、だから他のことはあまり覚えていないのかもしれません。

 

僕は泣く母親の姿を見て初めて、心から心配してくれていたことに気づきました。

そして、それを悟られないように、普段通りに接して陰ながら支えてくれたこと。

その強さと、僕が掲示板を見に行っている間の、不安に押し潰されそうな弱さと。

 

受験は、子どもひとりで戦っているわけではない。

ときに、母親の方が頑張っている時もある。

そんな当たり前のことを、強く強く、感じたんですね。

 

 

これは、部活動の引退がかかった試合でも、同じことが言えると思います。

 

部活動の大会を観に行くと、必ずスタンドには、母親たちの姿。

負けたチームのスタンドでは、子どもに負けないくらい、母親たちは悔し涙を流しています。

でも、それでも、家に帰ればあたたかい料理と優しい言葉で、我が子を労うのでしょう。

 

 

母親たちは、誰かに褒められたくて子どもを支えているわけではないのは、十分承知しています。

それでも、受験や部活動の際、子どもだけでなく母親も、もっと讃えられていいのでは、と思ってしまうのです。

 

 

だからたとえば、“ヒーロー扱い”の法則の観点から考えれば、毎日の美味しい料理を支える電力会社や家電メーカーが、今年3月の受験のタイミングで「毎日子どもの栄養や健康を考えて、料理を通して励まし続けたお母さんたちにも『お疲れ様』」といったメッセージを発信する、といった施策の方向性は考えられないでしょうか。

 

CM上の演出ではなく、ドキュメンタリー的に、とある家庭の父親にも協力してもらいながら、合格発表や引退試合からひと足先に母親だけ家に帰った際、我が子を応援する姿を額縁に飾った写真や花束とともに、父親から一言「ママもお疲れ様」と迎えるようなヒトコマを描いてもいいかもしれません。

 

ビジネス的な側面から捉えても、ブランド好感度に直結するのではないでしょうか。

 

 

そのような取り組みや施策がもっと増えていくことは、世界を少しずつ豊かにしていくように感じます。

 

 


 

※その他の類似施策は、以下URLにまとまっていますのでご参考ください。

アイデアの補助線(Pinterest)| ヒーロー扱い の法則

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